Blog by So-Cal Connection

So-Cal Connection 「寄り道の続き・・・」


So-Cal Connection <Verse 5>

<Verse 4>のそれは、本当にただ1つの例でしかありません。もっともっと凄い人達なのでした。ある時には、「坂本君、ビーチに連れてって欲しいんだけど、良いかな?」って電話がありました。サンタモニカとかベニスビーチはツーリスト用のビーチで、正直な処、我々ローカルの人間はこれらのビーチには行きません。もっと綺麗で、静かなビーチである、マンハッタンビーチとかハモサビーチに行くのです。まあ、そう言う訳で、大切なお客様である山本コテツさんですから、もちろんマンハッタンビーチへお連れしたのですが、まず、伊知郎と山本さんとを、ニューオータニから私のガーディナのアパートへお連れし、ビーチタオルとかの必需品をピックアップしたのですが、この時の近所の駐在員の奥さん達の顔!写真に撮っておけたら良かったと思います。特に「私は毛唐が嫌いだ」って何時も私に言ってた駐在員の奥さんなんかには、直接山本さんと伊知郎を紹介しちゃいましたので、度肝を抜かれていました。

ところで、この時は未だ3月だったので、晴れていても海は冷たくて、ウェットスーツを着ているサーファー以外には、水に入る人なんていません。はっきり言って、夏でもカリフォルニアの海はアラスカからの寒流ですので、冷たくて、ウェットスーツ無しでは、ちょっと入れないのです。山本さんは、始めから、何が何でも海で泳ぐって決めていたらしく、ビーチに着いて、伊知郎と私とで、ビーチタオルを敷いたり、アイスチェスト(クーラーボックス)をなるべく、モノグサしても手の届く位置にセットしたりしている間に、あっと言う間も無く、素っ裸になり、スタスタと海に向かって早足に出て行っちゃたのです。波打ち際をジョギングしていた人とか、我々の後ろのバイクパスでローラースケートとかしていた人達も、完全に固まってしまい、全員が山本さんに注目しちゃっていました。まるで、山本さんの周りの空間の時間が停止してしまったような状態です!伊知郎はと言いますと、高校時代から全く同じで、こう言ったちょっと普通でない物を見たときとか、友達の失態を目撃した時の、彼特有のちょっとニヒルな笑みを浮かべて、嬉しそうにしていましたが、私に「おい、ちょっと変体的だぜ!」って言いました。

山本さんは、そのまま全く躊躇なく冷たい3月の海の中へ入って行き、泳ぎ出しました。あっと言うまに50メートルは岸から離れた地点まで出て行ってしまっており、伊知郎の言葉を借りるならば、「おい、まるで海坊主だろ!」でした。ご存知の様に山本さんは頭を完全に剃りあげており、しかも素っ裸な訳ですから。
15分位して、まるで、ゴジラが上陸して来るのを見守っているかの様な人だかりが出来てしまっている中、ゆっくりと、しかも堂々と、山本コテツさんはマンハッタンビーチに上陸しました。さすがの伊知郎も、浪打際までタオルを持って山本さんへと走って行きました。私はただ唖然と見とれていました。

プロレス自体は、シナリオが出来ているようですが、山本さん曰く「坂本君ね、もしルールが無い喧嘩だったら、我々プロレスラーは誰にも負けませんよ!極真空手だろうが、ボクシングだろうが、太極拳でも、全く相手にならないね!」とのことです。そんなプロレスラーの凄さを、山本さんは更に、「私が若い頃、悪役としてアメリカで興行して歩いている時に、友人のプロレスラーで、フロリダの綺麗なビーチに住んでいるやつがいてね、その彼は自分で軽飛行機を飛ばしいたんだけど、この時、彼の家族と私がビーチで見ている前を飛んで見せている時に、突然海に墜落しちゃって、その飛行機に火が点いちゃったんですよ。岸から100メートル以上はあったので、誰も助けに行けてないうちにです。そして、次の瞬間に爆発が起こり、大炎上となってしまい、ついに彼は脱出出来なかったのですが、墜落して焼け爛れた機体と共に、彼の遺体も陸に引き上げられ、検証がされた訳ですよ。そしたら、彼の足が機体の間に挟まっていて、取れなかったことが明らかになったのですが、その挟まっていた足を、ポケットナイフで切り落として脱出しようとしていた跡が残っていたんですよ。ナイフが足の踝の上の骨の半分まで入っていんですよ!凄い根性でしょう?これがプロレスラーなんですよ!」って語ってくれました。

こうして数年間に亘り、伊知郎とコテツさんが年に2度ほど訪問してくれました。伊知郎だけとも、色々と変体的な出来事に遭遇しましたが、これは学生時代からのことですので、別に驚きませんでしたが、殆どは、こっちが恥ずかしい思いをして、それを伊知郎が目撃してしまったと言うパターンなのです。まあ、幾つかは今の伊知郎を脅迫出来るような題材も無きにしもあらずなのですが、ここで、親友を傷つける訳にも行きません。
でも、ニューオータニの可愛い出来事だけは書いておきます。伊知郎が来ると、私は何時も彼の部屋に泊めて貰うこととなっており、この時もその予定でしたが、その時にちょうどかち合って、大学のフリースタイル・スキー部の後輩の女の子が彼女の叔母様と、同じくニューオータニに宿泊していたのです。この日は、伊知郎達は到着した日で、リハーサルを終えて、伊知郎以外の人達は殆どラスベガスへ行ってしまっていたと記憶しています。

私は、この後輩の子と2人でディズニーランドへ行っていて、花火を見てから、ディナーを済ませて、一緒にニューオータニへ帰って来たのです。この子も学生時代に伊知郎と面識があったので、彼女の部屋へ送る前に、伊知郎の部屋へ挨拶に行ったのでした。
すると、伊知郎は既にボクサーショーツ1枚きりの半裸状態で居たのですが、ドアの外まで出てきて、「おい、お前、ちゃんと帰ってくるのか?彼女の叔母さんの部屋へ本当に行くのか?・・・・おい、ドア閉めちゃうぞ!」って遣り出しちゃったのですよ。これ恥ずかしいですよね!もう無視して彼の部屋から離れて彼女と歩き出したら、更に大きな声で「おい、閉めるぞ!本当に閉めるぞ!」って勢い余っちゃった訳です。

それでも、勝手にしろよって思いながら、背中を見せたままで手を振りながら、エレベーターホールへと向かいました。すると、ガチャってドアの閉まる音が聞こえたので、やっとうるさい奴が静かになったと思いきや、「おい、坂本、本当にドア閉まっちゃったよ!」って泣きそうな声が聞こえて来ました。振り返ると、彼の部屋の前で、ボクサーショーツのみの伊知郎が情け無さそうに立っています。「もー!ちょっと待ってろよ!」と言い残し、取り敢えず、彼女を叔母様と一緒に泊まっている部屋まで送り届けてから、伊知郎の部屋へと引き返しました。本当は、ナイトキャップにラウンジで、伊知郎抜きで、彼女とカクテルかなんかを一杯だけ飲もうと思っていたのですよ!

伊知郎はそのまま、自分の部屋の前に立ち続けていました。それで、「坂本、フロントから鍵貰ってきてよ!」って言うので、「駄目だよ、お前の部屋の鍵は俺には貰えないよ。皆お前の事は知ってるんだから!自分で行くしかないだろう!」って意地悪しちゃったのです。そして、今度は2人でロビーまでエレベーターで降りて、半裸の伊知郎がフロントデスクまで行くのを、私はエレベーターホールの柱の影から観察させて貰いました。
既に11時頃でしたが、まだ、ロビー階のピアノバーはやっていましたし、結構ロビーには人が居ましたので、久しぶりに反対の立場を楽しませて貰ったこととなったのでした。<続く>