キー・トゥ・ノーウェア KEY TO NOWHERE

■1983年作の本アルバムでキーとなっているのは、ハープとジンバブエに住むショナ族の民族楽器カリンバの導入。これらが加わり、前作『Move Ever Onward』で顕著だったエキゾチシズム溢れるブラック・ジャズ・サウンドが、さらなる高みの域へと引き上げられている。加えて、クラブ・ジャズ界でカルト的な人気を誇る伝説のスピリチュアル・ジャズ・ユニット、バースライトのリーダー、ナサー・アバディーが参加!!

■キャスリーン・エメリーなどのヴァージョンでもおなじみの古典M-1、ムビラがあまりにも崇高な響きを奏でるがゆえに、安易に「癒し」という言葉をもち出すことすら憚られるM-2、ファラオ・サンダースやアリス・コルトレーンの諸作を想起させるピースフルで牧歌的なM-3、アーの妻アヤナに捧げられたナンバーで、ハープの音色とナターシャ・ハサン・ユセフのヴォーカルが幻想的なサウンド・ジャーニーを繰り広げるタイトル・トラック、サン・ラ然とした飛び道具も登場するミステリアスなM-5、ブルースに受け継がれたアフロ・アメリカンの精神性を鮮やかに抽出してみせたM-6、肉感的なベースラインとパーカッションがリズミカルに失踪するジャズ・ダンサーM-7で構成されるこの1枚が放つ音絵巻は、どこまでも美しく、そして儚い……。

■この再発がサン・ラ、ジョン・コルトレーン、ファラオ・サンダースを敬愛するスピリチュアル・ジャズ・ファンやストラタ・イースト、ブラック・ジャズ、トライブのアイテムに食指を伸ばすブラック・ジャズ・ラヴァーたちの支持を集めるのは必至！またクラブ・シーンでのサン・ラ人気を考慮に入れて、カール・クレイグやムーディーマン、セオ・パリッシュをフォローする新譜のユーザー層を開拓していくに値するポテンシャルをも、本盤は併せもっている！

■解説：北浦知司

★Brother Ah、スピリチュアルという言葉だけでは言い表せないほど深い。一般的に言われるDeep HouseのDeepが海や地球の深さとするならばBrother Arは宇宙の深さだ。そんな深いJAZZを体験出来るはず。CALM