ゴールデン・クラシックス GOLDEN CLASSICS

■本盤は、マリーナ・ショウの1977年作『Sweet Beginnings』と'78年作『Acting Up』をカップリングしたモノ。才人ジェリー・ピータースもキーボード奏者として名を連ねる前者では、グルーヴィーなベースラインと歯切れのよいホーンに支えられて、ショウが力強い唱法を披露するミッドテンポ・ソウル「The Writing's On The Wall」、印象的なリフレインを奏でるキーボードにパーカッションが絡んで幕を開け、上質のブギー・サウンドを展開するタイトル・トラックのデキが際立つ。そして極めつけは「Look At Me, Look At You」！カラフルな音色を現出するキーボード、ブリージンなカッティング・ギター、メランコリックなフルート、可憐なコーラスなどで形成されるブラジリアン風のトラックをバックに、切々と歌い上げるショウのヴォーカルは実に情感豊か。一方、後者の聴きどころは、リロイ・ハトソン辺りのカートム・サウンドを彷彿させる2ステップ・ソウル「Rhythm Of Life」、「Dreamin'」、アル・ジョンソンのヴァージョンでもおなじみのクラシック「I'm Back For More」といったナンバーに集約されていると言えるだろう。　

■'66年にシカゴの名門黒人音楽レーベル、カデットに吹き込んだ「Mercy, Mercy, Mercy」で一躍、脚光を浴びたマリーナ・ショウは、同時期にカウント・ベイシー・オーケストラの歌姫にも抜擢され、シンガーとしての地位を確たるものにする。同楽団に4年間在籍した後、彼女は名門ブルーノートと契約。5枚のアルバムと数枚のシングルを発表し、\76年、同レーベルを後にする。こうして華麗な経歴を築き上げたショウは、ジャズ、ソウル、ブルース、ポップスといった要素を呑み込んだスケールの大きなヴォーカリストに成長。ジャンルの枠に縛られない彼女のタイムレスな歌声は、世の趨勢がブラコン、ディスコへと向かっていた時代にリリースされたこの2作で、一層の輝きを放つこととなる！

■「Look At Me, Look At You」は、クラブ・ジャズ?レア・グルーヴ・シーンで古くからプレイされているアンセム！あのジャイルス・ピーターソンやパトリック・フォージも80年代の終わりからスピンし続けるこの楽曲は、あらゆるジャズDJにとっての聖典と化している。古くから多くのDJにスピンされ続け､サンプリング・ソースとしてもつとに有名な彼女の名が、クラブ・ファンの間に広く浸透しているのは、もはや疑いのない事実。オマケに、その確かな歌唱力ゆえに、ジャズ、ポピュラー、ソ\\ウル、リズム・アンド・ブルースなど各方面で支持を集める彼女だけに、本作が特定のカテゴリーにとどまらず、あらゆるファンにアピールする一枚となるのは確実だろう！

■解説：北浦知司