ラジオ・ミャーク RADIO MYAHK

アーティスト
ブルー・アジア
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レーベル
ヴィヴィド・サウンド
商品区分
CD
発売日
2013/04/17
品番
VSCD9724
税込価格
2,409円
ジャンル
サブジャンル
沖縄・宮古島/DOWN BEAT
バーコード
4540399097244
※ 先頭3桁が「200」の場合は非JANコード(転用不可)
久保田麻琴プロデュース『スケッチ・オブ・ミャーク』の続編『ラジオ・ミャーク』が遂に完成!
2012年に全国公開となった同タイトルの映画『スケッチ・オブ・ミャーク』が絶賛される中、満を持してのリリース決定です!!

「宮古はファンキー!リミックスとは思えないほどぴったりはまっている。これは愛凋盤になりそう。」
ピーター・バラカン

楽曲リスト

DISC1

久保田麻琴率いる日本人2人、マレーシア人2人からなる多国籍音楽プロデューサーチーム、ブルーアジア。その久々の新作は前作「スケッチ・オブ・ミャーク」から続く、ミャーク=宮古の神歌/古謡シリーズの第二弾。その名も「ラジオ・ミャーク」。

 2009年7月にリリースされた前作「スケッチ・オブ・ミャーク」から早三年半。その間、ミャークの音楽を取り巻く音楽環境は一変した。同月に東京草月ホールにて「東京の夏音楽祭 宮古島の神歌と古謡」公演が開催され、80代から90代の元司(つかさ)三人によって宮古の神歌が歴史上初めて島の外で歌われた。その後も佐良浜地区の司を卒業したばかりの女性5人組、ハーニーズ佐良浜を中心にした東京公演が三度開催された。そして何よりも、草月ホールの公演をハイライトとしたドキュメンタリー映画「スケッチ・オブ・ミャーク」が2012年9月に全国公開となった。この映画は日本の音楽ドキュメンタリー映画としては異例の、のべ2万人近くが鑑賞し、2013年2月20日現在もアップリンク渋谷でのリバイバル上映が3月現在9週間のロングランヒットとなっている。9月の東京写真美術館の上映から数えれば半年間を数える。

 映画の主役は80代から90代の元司の女性、自称「ニスムラ・キャンディーズ」こと長崎トヨ、高良マツ、村山キヨであり、また撮影当時10歳の天才少年、譜久島雄太であり、とても可愛らしい声のおばぁ、宮国ヒデであり、病床に伏したまま映画に登場し、撮影後急逝してしまった嵩原清である。久保田はあくまで、そうした主役たちとの出会い、交流を通じて自然に沸き上がるストーリーを引き出す語り部なのだ。

 しかし、映画の中で最も強烈な印象を残す音楽は嵩原清の原曲を、ブルーアジアがスワンプ・ロック風にリアレンジした「池間口説」であろう。前作CDはCDショップ以上に映画館で売れているというのも納得だ。 

 今回の「ラジオ・ミャーク」は、前作アルバムから三年半、映画の完成から二年が経ったその後のミャークの音楽家たちと久保田との最新の音楽の記録、対話、実験の成果が収められている。久保田は今も頻繁に宮古に通いつめ、時に数週間も逗留し、知られざる歌手やかつての司たちを探し出し、マイクの前に立たせ、更にカセットやレコード盤として埋もれていた過去の音源を発掘し、そして、インスト・ジャム・バンドのBlack Waxをはじめとする現在の宮古のロックやレゲエなどの若い音楽家たちまでをプッシュアップし続けている。

 そのため、ブルーアジアの初期の作品「ホテル・イバ」や「ホテル・バンコク」などのアンビエント&ラウンジ・サウンドとは異なり、「ラジオ・ミャーク」では久保田のギターもブルージーで泥臭く、リズムはますます土着的でグルーヴィーになっている。

  

「今までのブルーアジアは、例えるなら空港でかかっている音楽、ラウンジ音楽だった。今回、そのラウンジの幕が落ちて、後ろにリアルワールドが見えてきた。後ろにはオッチャンが三線を弾いて、元司たちが歌っている。でも、そこには本当は差はないんだよ。音は音なんだし、響きなんだから」



 「ラジオ・ミャーク」というタイトルから、僕は久保田が以前話してくれた宮古の有線ラジオ放送の話を思い出した。第二次大戦後、過疎地域や離島の生活を守るための通信インフラとして導入された有線ラジオ放送。宮古や沖縄、奄美群島ではアメリカ軍によって設置されたが、その後、無線や衛星放送などの普及により、次第に廃れ、消えていった。久保田は宮古の南部、新里地区、現在のシギラビーチリゾート周辺にかつて「親子ラジオ」と呼ばれた有線ラジオ放送が存在し、その放送を天職とし、島の音楽、島のニュース、そして島の冠婚葬祭とともに生きた新里青春の半生を楽しげに語ってくれたのだ。

 

「おはようございます。ラジオ屋の新里です。今日は海が荒れていますから、船を出す方は十分にご注意下さい。今度の土曜はシギラの結婚式場兼ディスコの"ビーチ"で△△家長男と□□家長女の結婚式がとり行われます。さて今日の1曲目は『池間口説』です」



「ラジオ・ミャーク」は、その親子ラジオが2013年の現代に蘇ったら? まさにそんな仕上がりである。聞こえてくるのは、大正15年生まれのサトウキビ農家、盛島宏が妻をにわか録音エンジニアに仕立て上げカセットに録音した民謡だったり、門外不出だった神歌を、神様と直接交渉して公にすることを許されたハーニーズ佐良浜が歌う神歌だったり、Black Waxの紅一点26歳、マリノのサックスだったり&hellip&hellip。個性が強すぎる歌手や音楽家たちを、時に褒めあげ、なだめすかして、まとめるのが久保田麻琴とブルーアジアの役割だ。そして、そんな楽しげな久保田に誘われて、SAKEROCKをはじめとする日本の様々なグループで引っ張りだこの人気ドラマー、伊藤大地が参加し、旧ソ連邦ウクライナ出身、現アムステルダム在住の民謡トロニカ音楽家OMFO、さらにイスラエルの地中海に面した芸術家の町ヤッフォを拠点にする中東サーフロックバンド、BOOM PAMのリーダーであるUBK(ウリ・ブラウネル・キンロト)もリミキサーとして本邦初登場している。

 現代の商業ラジオ放送では大衆化/商業化されたポップ音楽のみが大手を振っている。そこには大衆化/商業化される以前のルーツの音楽、スピリチャルな音楽の場所はない。しかし、ミャークの人々と、ミャークの響きに心打たれた人がリスナーである「ラジオ・ミャーク」はそんな枠組みから自由だ。

 映画をきっかけに「ミャークの曲をもっと聴きたい!」と思い始めた方、お待たせしました。ブルーアジア「ラジオ・ミャーク」をごゆっくりお楽しみ下さい。

2013年2月19日

サラーム海上

ディスコグラフィー