Blog by 福田直木

福田直木『CROSSOVER LABORATORY』

クワイエット・ストーム特集

こんにちは。
ブルー・ペパーズの福田直木です。
僕がFMヨコハマからお届けする『CROSSOVER LABORATORY』
いつもお聴きいただきありがとうございます。

この番組では70年代から80年代に流行した豊かな音楽、AORやクロスオーバー、フュージョン、ブラックコンテンポラリーなどから僕がお気に入りの曲をピックアップして、その聴きどころなどをご紹介しています。

このブログでは番組でご紹介した作品を再度ピックアップしてお届けしています。

今回は80年代終盤から90年の甘~いボーカルナンバーをご紹介します。

★Someone Like You
Perri / Tradewinds (1990)

 

 

 

 

 

 

 

 

ペリはアニタ・ベイカーのバックコーラスを務めていたり、パット・メセニーと接点があったりする4姉妹から成るスムース・ジャズ・ボーカルというか、クワイエット・ストームというか、ジャズ色の強いソウル・グループでね、最近こういうテイストの曲が聴きたくなることもあって選んでみました。途中のボビー・ライルのピアノソロも素晴らしいですね。こういうクワイエット・ストーム系の曲に合う硬めの音色のクリスタルなピアノといえば、個人的にはジョージ・デューク、ジョーサンプルとボビー・ライル辺りがたまらなく好きですね。

★Come In
Dianne Reeves / Never Too Far (1989)

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイアン・リーヴスはジョージ・デュークのいとこにあたるジャズ・ボーカリストですね。もともと70年代はクラーク・テリーやセルジオ・メンデスのバンドで歌っていて、82年にソロデビューして、2000年代に入ってグラミー賞を受賞していたりするバリバリ現役の大物歌手、という感じでしょうか。でもね、僕みたいにAORやフュージョンを追いかけている人の目線だと、「フュージョンミュージシャンが歌モノをアルバムに入れる時にフィーチュアされる率No.1の女性歌手」みたいな感じに映ったりします。男性だとフィル・ペリーとかに近い感じですね。

それで、この曲は89年・ジョージ・デュークのプロデュースということもあって、クワイエットストーム度が高くて聴きやすい仕上がりになってますね。聴きどころはイントロの「ウッ↑ウーン↓」というエイブ・ラボリエルの十八番パーカッシブベースです。僕はベースは全然弾けないんですが、真似したくなってやってみると、音の長さとキレのコントロールというか、コレがめっちゃ難しいんですよね。

★Love Is in Your Eyes
Angela Bofill / Intuition (1988)

 

 

 

 

 

 

 

 

アンジェラ・ボフィルもジャズ/フュージョン系の大御所ボーカリストですね。この曲はLA在住の日本人、タカヤナギツヨシさんという方の作曲なのも興味深いな~と思いました。それでこの前タカヤナギさんについて調べてみたら、ナンシー・ウィルソンやピーボ・ブライソンのほか、宇多田ヒカルさんの『First Love』にも参加していて、こりゃまた面白いな!というのが最近の発見です。

というワケで、直接関わりがないアーティストの曲ですが、上記の3曲続けて聴いてみると、僕はまだ生まれていないですけど、この時代の流行りのようなモノが見えてきて楽しいな、なんて思います。リアルタイムではない時代の音楽をどんどん聴いていくと、そのひとつひとつの点が集まって線に見えて来る瞬間があって、その時代を生きていた人と感覚を共有できる気がするのが楽しいんですよね。この線のような「しつこい」選曲に、もうしばしお付き合いください(笑)

★Gonna Make You Mine
Natalie Cole / Good To Be Back (1989)

 

 

 

 

 

 

 

 

次はナタリー・コールの89年のアルバム『Good To Be Back』から「Gonna Make You Mine」という曲です。コチラの曲はクワイエット・ストームの最重要人物、アニタ・ベイカーの「Caught Up In The Rapture」とかが有名かな、ギャリー・グレンという人の作曲ですね。

僕が最初にナタリー・コールを聴いたのは、中学の時に母親が持っていた『Unforgettable』のCDだったかなと思います。その後好きになった曲が70年代の「La Costa」とか「The Winner」とかで、そのあとにこの89年の『Good To Be Back』をちゃんと聴いたんだっけな。「Miss You Like Crazy」とかも泣ける曲ですよね。

ナタリー・コールのボーカルは、声の切り方が何というか、「少し投げやり」に聴こえるところに僕はすごく人間味を感じて好きなんですよね。初期も、沈んでいた80年代前半も、その後復活した時期も全部好きだっただけにね、数年前の年末かな、亡くなったときは本当に悲しかったなあと思い出します。ということで、今回は彼女の曲の中でも多分最もクワイエット・ストーム寄りな「Gonna Make You Mine」をピックアップしました。

★Sweet Love
Anita Baker / Rapture (1986)

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまで敢えて「Sweet Love」という曲名を出さずに喋ってみたのですが、今回の選曲テーマは「Sweet Love」の影響下にある曲集でした。ということで、最後はクワイエット・ストームの女帝、アニタ・ベイカーを掛けないわけにはいかないですね。きっと4曲お付き合いいただいたリスナーの方の半分くらいに無意識に「Sweet Love」を連想してもらえたんじゃないかな、なんてね。新手の洗脳術?かもしれません。

こんだけ凄い曲だと、ある程度フォーマットとして乗っかる人が出てくるのかな、と思いますね。テンポが90前後で、8ビート、生演奏中心、8ビートみたいな。コードの使い方にもかなり似た傾向があって、選曲している自分が一番楽しんでました。