Blog by ヴィヴィド・スタッフ

2ndアルバム「HURRICANE UPSETTER」を5月15日にリリースする、Magic, Drums & LoveのJinta=Jintaのインタビューを掲載しました!

Magic, Drums & Loveの2ndアルバム『HURRICANE UPSETTER』が間もなくリリースされる。昨年リリースした「恋はパラディソ」「大東京今夜的愛」を含む全13曲。今作は松田 “CHABE” 岳二がプロデュースを担当し「HURRICANE VOYAGE ~キケンな航海~」では三輪二郎をゲストボーカルに迎えている。
ディスコ、シティーポップ、ラテン、ドゥーワップ、アイドルソングetc…。過去の様々な音楽を取り込みながら現在まで一気に疾走し、勢い余って未来まで描いてしまう、そんなパワフルかつチャーミングなポップミュージックは健在だ。しかし今作は楽しげながらもどこか不気味な感触もつきまとっている。これはどういう事か。アルバム全編で作曲を手掛けるJinta=Jintaに話を聞いた。

Magic, Drums & Love『HURRICANE UPSETTER』

 

 

 

 

今回は全面に旅感を出したいなっていうのがあった。

──このたびは『HURRICANE UPSETTER』リリースおめでとうございます。

Jinta=Jinta:ありがとうございます。

──いっぱい聞きたい事があるんだけど、まずは『HURRICANE UPSETTER』っていうタイトルの意味とかイメージから教えてもらってもいいですか?

Jinta=Jinta:なんか、色々迷ってて。すっげえ迷ったんです。タイトルいつも迷うんですけど。なんか、旅っぽいイメージがありまして。あと航海とか。アルバム全体的にわりとそんな雰囲気を出したくて。旅っぽいかんじ。旅っぽいかんじなんですけど全然『HURRICANE UPSETTER』って旅っぽいかんじじゃないか(笑)。

──(笑)。JOURNEYとかそういうかんじではなく。

Jinta=Jinta:そうですね。最初ね“危険な航海”ってタイトルにしようとしてたんですよ。でもあんまりメンバーの反応が良くなく、オレだけがなんか、よくあるんですけど、また言ってらあみたいな雰囲気が出てたんで(笑)。で、危険な航海はやっぱHURRICANEとか…なんかね、危ないかんじにしたかったんですよ。で、HURRICANEなんとかにしようと思って。UPSETTERは普通はあんま使わない単語で、何で思いついたのか忘れちゃいましたけど、意味調べたら“ひっくり返す”とかそんなかんじだったんで…なんか、なんだろう、あんま意味はないですね(笑)。ヤバそうなかんじ、危険なかんじを出したかったんですよ。

──なるほど。旅のかんじと危険なかんじ。

Jinta=Jinta:そう。“危険な旅”っていうかんじ。

──それはアルバムを作る前から“危険な旅”のイメージはあったの?

Jinta=Jinta:いつも思ってます、なんか作る時は“危険な旅”っていうのは。

──へー。アドベンチャー感?

Jinta=Jinta:そうアドベンチャー感。旅はいつも思ってて。(1stアルバム収録曲の)「Miami」とかも。あれはオレ作詞作曲なんですけど。なんか作る時にいつも旅はあるんですよ。何でかわかんないんですけど。で、今回は全面に旅感を出したいなっていうのはあって。

──じゃあ途中から今回は旅だなって思ったというよりは、ずっとあったイメージがとうとう全面に出たというかんじ?

Jinta=Jinta:そうですね。

 

あんまり歌詞とかには出てないけど、いつも“死”がどうのとか言ってましたね。

──アルバムの作り方としては、出来ていったものを順に録っていったのか、それともまず全体のイメージがあってそこに近づけていったかんじなの?

Jinta=Jinta:元々曲がいくつかあって「MOMONA」と「DEATH COUNT」はもう2~3年前ぐらいからあったんですよ、多分1st作り終わってからすぐ。それプラスシングル曲「恋はパラディソ」と「大東京今夜的愛」それ込みでどうしようかなって後から作ったのが他の曲ってかんじで。

──そうなんだ?「DEATH COUNT」凄いなと思って。アルバムの中でも印象が強いなと。ジンタ君が歌ってるっていう事もあるし。

Jinta=Jinta:あ、ほんとですか。やったー。へー。いや結構しょうがなく、キーが誰にも合わなくて。本当はWhite Fire Shirohiが歌うのが一番いいなと思ったんですけど。でもあんまりいっぱい出てくるとWhite Fire Shirohiのメンバーの位置もよくわからなくなっちゃうんで。で、オレがヴォコーダーで全部歌うかってかんじになって、そうしたってかんじですね。

──この曲タイトルからしても珍しく“死”って言葉が入ってるし、さっき“危険”って言葉が出たけど、そういうイメージがジンタ君から出てくるのが珍しいなって思って。

Jinta=Jinta:あー、でも結構“死”はいつも(メンバーには)言ってた気がする。あんまり歌詞とかには出てないけど、いつも“死”がどうのとか言ってましたね。

──でも今までそれを表に出す事はしなかったじゃない?

Jinta=Jinta:確かにそうですね。

──だからそこが凄い変化だなと思ってびっくりしたんだけど、それは何でなんだろう?

Jinta=Jinta:歌詞はYURINA da GOLD DIGGERが全部書いて。この曲は特に指定もしてないんですよね、こういうかんじにしてくれとか。タイトルも後からつけたタイトルで。

──普段YURINA da GOLD DIGGERが作詞する時も多分ジンタ君と相談しながら作ったりするでしょ?

Jinta=Jinta:結構そういうのが多かったですね。今までは。

──だから「DEATH COUNT」もジンタ君が大まかなイメージを伝えてYURINA da GOLD DIGGERが書いたのかなと思ってたんだけど、違うんだ?

Jinta=Jinta:でもなんかね、よくYURINA da GOLD DIGGERが詞を書く時に、これは死と~とかは凄い言ってたんですけど…だからYURINA da GOLD DIGGER的な問題かもしれない。

──「メテオ・フライト」はジンタ君が作詞してるじゃないですか。この曲はオレが書くぞっていう気持ちがあったの?

Jinta=Jinta:この曲はオレかなぁっていうのはありましたけども。「メテオ・フライト」は多分ね、このアルバムの中で1番好きですね。難しい事やってるわけじゃないんですけど、今までこういう曲って作った事なくて。

──この曲凄いよね。よくこんな曲が書けたなって。

Jinta=Jinta:音数が超少ないんですけど、この曲ギター弾いてないし。そういえば自分で何も演奏してないですね、この曲。ギターはGjoe Clinton & His Pyramid Shakersだし。より静かな音楽が、聴くのも好きだし、やるのも…やりたい気がしますね。

──うんうん。YURINA da GOLD DIGGERの歌い出しの低い声にびっくりしたんだけど、アルバム通して聴くと今回はあれだけ高音が出るWhite Fire Shirohiも℃-want you!もキーが低く設定されてるんだよね。

Jinta=Jinta:あーそうですね。キーは低めですね。

──それは狙ったというよりは自然とそうなっていったの?

Jinta=Jinta:そうですね。

 

もうね、なんか踊れなくてもいいなって。

──ライブをイメージしたというよりは家で聴く事をイメージしたのかな?

Jinta=Jinta:そうですね。前からそれは結構そうですけど。でも、Magic, Drums & Loveはみんなで盛り上がれるパーティーソングみたいなのをオレも最初はやりたいと思ってたんですけど。もうね、なんか踊れなくてもいいなって。「大東京~」とかはこういうの作ればいいんでしょぐらいのかんじで作ってて(笑)。「恋はパラディソ」とかもそうなんですけど、本当はね、全然踊れなくてもいい。どんどんそういうものから興味がなくなっていきますね。なんか…楽しげなやつから(笑)。

──シティーポップっぽい曲が多いなとも思ったんだけど、そういうアルバムにしようという意図があったの?

Jinta=Jinta:いや全然。シティーポップっぽいのはYURINA da GOLD DIGGERの声に合ってる気はしますけど。シティーポップっぽくしようとは思ってないですけど。…シティーポップって今まであんま聞いてなかったんですけど、EMARLEのDJとか聴いてると、すげえなって曲がいっぱいあって。これは作れねえなあみたいな。作れねえなあっていうかんじがあったんですけど、作ってみたいなっていうのもあって、頑張ったかんじですかね。

──Magic, Drums & Loveを始めてからDJの人達と共演する事が増えていったと思うんだけど、その影響でこういうアルバムになっていったと。

Jinta=Jinta:それはちょっとあると思いますね。一要素として。

──DJの影響なんだけど結果的に“踊れなくてもいい”って所まで行ってしまう(笑)。

Jinta=Jinta:確かに(笑)。

──でも確かにシティーポップのアルバムなのかなって思って聴いてるとフォークっぽさもあるし、シャネルズみたいなドゥーワップもあるし、それらがペットサウンズみたいな雰囲気にまとめ上げてられてて、その情報量にクラクラした。

Jinta=Jinta:あー、そう聞くとすげーいいアルバムな気がしてきます(笑)。結構、人の評価を聞かないと安心できなくて。よくわかんないから。だからそう言ってもらえると、いいのかなと思います。

──いや凄いよ。だってアルバムの終わり方とか凄いショッキングだったよ。

Jinta=Jinta:あれ、ショッキングに聞こえます? あーじゃあよかった。ショッキングにしたくてああしたんです。

──ヘッドフォンでアルバムの世界に入り込んで聴いてたら、突然シュッと現実に戻されて凄いゾクッとした。

Jinta=Jinta:あ、よかった。それはそうしたいなと思ってたんで。

──あと、全体のイメージがいつもよりシリアスだなって思ったのと、それに加えて今までよりもエレガントな作りになってるなとも思ったのね。

Jinta=Jinta:あーはいはいはい。うんうんうん。

──本人としては意識してそうなったの?

Jinta=Jinta:なんか不穏なかんじにはずっとしたくて。なんか…不穏なかんじですね。不安なかんじ。

──不穏。それは今までずっとやりたかった事なの?

Jinta=Jinta:あーどうだろう。でも前回のアルバムの時はそうは思ってなかったんで…ジャケを毎回デザイナーの寺澤圭太郎さんと作ってるんですけど、その時も不穏なかんじにしたいって言ってて。なんでなんだろうと思って。…寺澤さんと話してる時に、多分結婚したからじゃないか?と思って。結婚って幸せなかんじですけど、オレはこうじゃねぇみたいな、もっとちげぇみたいなのがあったんじゃないかなあ?と思いましたね。

──はーなるほど。何だろうねそれ。

Jinta=Jinta:何なんですかね。なんかね、何かあるんですよね。何だかわかんないけど。

──逆に言うと結婚した事によってネガティブなものを出してもいいと思えるようになったっていう事なのかな。

Jinta=Jinta:あー。そうなのかもしれないですね。ネガティブな人間ではないですけど、暗い人ではあったので、だから今までキラキラしたものを作りたかったのかな。逆で。そうなのかもしれないですね。

──じゃあ、そのネガティブなかんじっていうのは、今の時代がそうだからっていうよりは、ジンタ君の今の気分がそうだからというかんじ?

Jinta=Jinta:あんまり社会は関係ないっすね。多分。

 

 

今回はあんまり悩まなかった。

──じゃあ改めてアルバム全体で本人としての手応えはどう?

Jinta=Jinta:どうなんですかね? あんまよくわかんないです(笑)。メチャクチャいいのができたってかんじじゃないですね。アルバムはいつもわかんないんですよね。

──そう言うと良くないのかって誤解されそうなんだけど(笑)、そういうわけではないんだよね。

Jinta=Jinta:そういうわけではない(笑)。いいアルバムなんです。今回はそんなに超苦しんで作ってないから。普通に決まった曲を録るようなかんじで普通にレコーディングも進んでいったから。『GOLD FUTURE BASIC,』(住所不定無職の2ndアルバム)の時は死ぬかと思ったんで。いつ終わるんだ?って思って(笑)。でも、わりと今回は普通に録れたってかんじですかね。あんまり悩みもしなかったし。

──ジンタ君としてはフラットに自分の音楽を作れたんじゃないかなと思って。それはライブにおけるジンタ君のルックスの変化が象徴的だと思ったんだよね。どんどん素に近づいてるなあって。

Jinta=Jinta:あーあー。はいはいはい。

──だからジンタ君としては変装してた時の方が、どうだ凄いだろって言いやすいんだけど。

Jinta=Jinta:まぁそうですね。

──それが素になっていくと凄いんだかどうだかわかりませんって本人は思うんだよね。でもハタから見たら、いやもう十分凄いよアンタはっていう。だから、さっき話したネガティブな事を出せるようになったのも、手応えがよくわからないって言ったのも、素に近づいてるからなのかなって。

Jinta=Jinta:あー。最近、私服とかでもまぁライブしてますからね。確かに。昔じゃ考えられないですね。

──ちょっと聞いてみたかったんだけど、ジンタ君って作曲家としての意識が強いと思うんだよね。

Jinta=Jinta:はい。

──だけどギターも弾くわけじゃないですか。その辺のプレイヤーとしての意識はあるのかなって。

Jinta=Jinta:ないんですよ。ただステージには居たいっていうのはあるんですよ(笑)。だからGjoe Clinton & His Pyramid Shakersが居てくれてホント助かるんですけど。あんまりちゃんと弾かなくても大丈夫なんで。

──そうなんだ? 例えばブライアン・ウィルソンなんかも途中から作曲だけしてライブには参加しなくなるじゃない。ジンタ君もそうなのかなって。

Jinta=Jinta:いや、でもそこは居たいんですよ(笑)。なんだろ。…オレの作った曲やっていうのをやっぱり言いたいなって。指揮者的なのがいいと思うんですよ。

──あー、確かに誰がライブ見ても、この人が曲を作ってるんだろうなっていうのはわかると思う。

Jinta=Jinta:本当ですか? 内藤さんは知ってる状態だから。初めて見た人はどうなんだろ?

──だって、他のメンバーはわりと真面目に演奏するんだけど1人だけ、オレの狂気を爆発させる!みたいな勢いの人がいるんだよ(笑)。

Jinta=Jinta:確かに(笑)。確かにそうですね。

──だって普通ディスコとかシティーポップであんな風にギターを天井にこすりつけたり、弦を引きちぎったりする人はいないんだよ(笑)。

Jinta=Jinta:確かに(笑)。怖いですよね。

──だからあれを見ると、この人が音楽的な発端なんだろうなっていうのはわかると思う。あと、この間ライブを見たらYURINA da GOLD DIGGERが今のMagic, Drums & Loveのモードをお客さんにわかりやすく伝えていた気がしたんだよね。尚且つライブ後に話しかけたらマネージャーっぽい機敏な動きで僕を楽屋に連れてってくれて。両方やれるの凄いなって思ったよ。

Jinta=Jinta:そこは任せてます。1人じゃ何もできないんで。助かってます。

──ボーカルとしても、アルバムごとによくぞここまで歌い方を変えられるなと思って。ここまで器用に変えられるのはキムタクかYURINA da GOLD DIGGERぐらいじゃないかって(笑)。

Jinta=Jinta:(笑)。White Fire Shirohiと℃-want you!は当て書きしてるっていうか、2人の声のかんじで書いてるから。YURINA da GOLD DIGGERが歌う場合はあんま関係なく作ってるんで、それに合わせて歌い方を変えなきゃいけないのかな。

 

ずっとロックンロールっていうのはあるんですよ。

──サウンドのスタイルはアルバムごとに変わりながらも、ジンタ君の作家性の部分で変わらない何かが今回もあると思ってて、それが何かって自分で説明できたりする? いつもこういうものを作ろうと思ってる、とか。

Jinta=Jinta:えー何だろう。えー。…わかんないっすね(笑)。…何だろうな。…ずっとロックンロールっていうのはあるんですよ。うーん。…ロックンロールぐらいしか思いつかない(笑)。

──でもそうなんだよね。ジンタ君はずっとロックンロールがやりたいからこそサウンドが変わってく人だと思うんだよね。

Jinta=Jinta:本当にそれぐらいしかないからな…。

──それはやっぱり今作も?

Jinta=Jinta:うん。ただ“踊れなくてもいい”っていうのが今回は違うのか?と思って。…内藤さんの中でロックンロールとパンクの違いってあります?

──パンクは反体制でロックンロールは無体制かな。だからパンクは偉いけどロックンロールは偉くない。

Jinta=Jinta:なるほど。そういう見方もありますね。オレの中ではロックンロールとパンクっていうのは同義語なんですよ。同義語なんですけど、唯一あるのはロックンロールは踊れなきゃいけなくて、パンクは別に踊れなくてもいい。ロックンロールは絶対に踊れなきゃダメなんですけど、パンクはもう、ぶん殴ればいい。

──へー! じゃあ“踊れなくてもいい”っていうのは今回はある意味禁じ手を出してきたって事なのかな?

Jinta=Jinta:まぁ今回は…。踊れますね、まだ。まだ踊れるけど、そう思い始めてきたっていう雰囲気ですね。次からはもう、ぶん殴ればいいやぐらいに思ってるんですよ。

(文=クラーク内藤/写真=小野由希子)